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Test Drive(02年7月28日)
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奥ゆかしくにじみ出る、超高性能と上質感:BMW330Ci
続いては、BMW3シリーズのフラッグシップ、330Ciのキーを手に取る。3シリーズはヨーロッパを始め、世界の競合がひしめく全長4.5m前後のミディアムコンパクトクラスの中で、メルセデスCクラスと並んでメートル原器とも言うべき完成度の高さを誇り、しばしば他のメーカーの開発目標となるほどの存在である。今回試乗したのは、3000ccのエンジンを流麗なクーペボディーでつつんだモデルである。 ボディーを一回りしてその佇まいを眺めると、同じ3シリーズのセダンとは少し違った優雅で妖艶な雰囲気を感じさせる。全体のイメージは踏襲しているものの、クーペは外装パーツのほとんどを専用品としているため、細かいディテールの違いがそう感じさせるのであろう。
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試乗コースに選んだのは、伊豆スカイライン。超高速コーナーやヘアピンを織り交ぜながら、登りでエンジンパワー、下りでストッピングパワーを試すことができる絶好のステージである。山々の緑に映えるトパーズブルーのボディー、この外観だけでもこのクルマを手に入れる価値があると思えるのは私だけだろうか。
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バルクヘッドにのめり込むようにマウントされている、直列6気筒エンジン。ストラットタワーより明らかに後方に位置し、視覚的にも回頭性の高さを伺わせる。231PSを発生する2979ccのDOHCエンジンは、ダブルVANOSと呼ばれる可変バルブタイミング機構を持ち、低速でのフレキシビリティーと高回転での伸びを両立している。
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BMWの伝統にのっとった、ドライバーを包み込むように湾曲したセンターコンソールを持つインテリア。いくら大型化してもゴージャスになっても、BMWはドライバーズカーであることを主張しているようなデザインである。少し小さめのメータークラスターは、運転席から見るとステアリングとのバランスも絶妙で、やはり運転に集中させようという意図がにじみ出ている。こういった細かい所のしつらえは、2002の時代から続く歴史の重みさえ感じさせる。 ステップトロニックのATをドライブに送り込み、ワインディングにノーズを向ける。ごく一般的なスピードでコーナーを一つひとつ抜けていくと、このクルマの素性の良さがじわじわとにじみ出てくる。BMWの6気筒エンジンを評するものとして、シルキーシックスという枕詞があるが、その名の通りウルトラスムーズで、かつ腰のある回り方をするエンジンであった。なにか、真円率の高い真鍮の円盤を超高速で回しているような、明らかに力感があるのに荒々しさのまったくない手応え、とでも言えばいいだろうか。 BMWと並んで珠玉のエンジンと称されるアルファロメオだが、その目指す方向はかなり違ったものであることを感じさせた。ステップトロニックのATも、マニュアルセレクト時のタイムラグも少なく、またシフトショックも皆無に近いので、このクルマの持つ高級感を損なうことなく変速してくれる。が、もしかなうなら、この宝石のようなエンジンをマニュアルミッションで堪能してみたい。そう思わせるほど、このエンジンはスイートなものであった。思えば、世界中のメーカーがスペース効率や衝突安全性の面での有利さから V6にシフトしていく中、かたくなに直列エンジンを守っていくBMW、世界最高のエンジン屋としての意地がそうさせるのであろう。
またハンドリングも、前225/45、後ろ245/45という極太のタイヤを完全に履きこなす懐の深さを見せてくれた。全幅1755mm/重量1520kgと、もはやコンパクトとは言えない体躯を持ちながら、タイトなコーナーでもサスペンションがよく粘り、高速域ではしっかりとしたスタビリティーを保っている。少し重めでちゃんと路面の状況を伝えてくれるステアリングと、当然のように剛性感の高いボディーのおかげで、まるで自分の家のリビングルームにいるかのような安心感の中で、アクセルを踏み込んで行くことができた。
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以前にアルファ145を所有したこともあるオーナーのO氏にうかがったところ、ネガティブな点は街中で同じクルマを見ることが多いことだけ、というくらい気に入られているそうだが、さもありなんと思わせる完成度の高さを持ったクルマであった。高速グランドツアラーとしての資質と、ワインディングでタイトコーナーをかすめ取るような運動神経、そしてそれらをスポーティーに演出する6つのシリンダー、これらの美しいアンサンブルは、BMWのかかげる「純粋なドライビング・プレジャー」というものの何たるかを高らかに宣言しているかのようだった。クルマを操る楽しさを、五感すべてを通じて伝えてくれるこのクルマは、そのプライスタグさえなきものとすれば、万人にとって最高のクルマのひとつとなることであろう。




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