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Test Drive(02年7月28日)
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アルファに乗ってるとはいえ、雑食性クルマ好きの私ゆえ、当然他のメイクスのクルマにも気になるものが多いです。イタリア車はもちろん、絶対性能だけでなく感性の域でも世界トップを目指しつつある日本車や、根強い人気を誇るドイツ車などにも興味アリアリでした。 そんなおり、友人がレガシイを新規導入したとの情報が入り、1年前にBMWを導入した別の友人ともども旅行に行くことになったので、これ幸いと試乗を申し出たのでした。そこで、ちょこっと乗っただけなんですが、試乗インプレをレポートしたいと思います。ここから、ですます調ではなくなりますので、ご了承ください。CGTVの古谷徹さんのナレーション風な文体にしてみました(笑)
 
能ある鷹は、電子制御で爪隠す:スバル レガシィGT-B E-tune II
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まず最初は、いまや富士重工の屋台骨ともいうべき人気車種、スバル・レガシィ。レオーネ時代から連綿と熟成させてきた4WD技術と乗用ワゴンというコンセプトを、このレガシィで一気に開花させた歴史的なブランド。それ以前にもクラウンやセドリックなどごく一部に5ナンバーや3ナンバーのワゴンは存在していたが、このレガシィ登場前は日本車のほとんどがワゴンの用意がなく4ナンバーの商用の「バン」であったことを考えると、日本のクルマ文化に対する貢献という意味でも歴史的な一台であると言える。
試乗したのは、レガシィ ツーリングワゴン GT-B E-tune IIという長い名前を持つ一台で、現状のラインナップの中では最強のエンジンを持つ一台。今回のクルマはATで、2リッターのツインカムにターボを組み合わせ、260psを稼ぎ出すという代物(MTは280ps)。このターボも「2ステージターボ」と言う大小2つのタービンを用いるタイプで、全回転域でスムーズに過給を行うという凝ったものである。ターボエンジンの欠点として、低圧縮比によるターボ実効域以下の回転でのトルクのなさがあったが、この機構でそれを回避したものと思われる。 駆動方式は「VTD-4WD」と呼ばれるトルク可変型の4WD。これもMTだと、ビスカスを用いる別のシステムの4WDとなるらしい。レガシィ全体で見ると、4WDのシステムだけで計4種類もあるそうで、かなり贅沢な設計をされたクルマであろう。この4WDというシステムに対するスバルの執念が感じられる。
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エンジンルームでは、その独創的な水平対向エンジンの特性を見事に活かし切った設計をされていることがはっきりと解る。つまり、エンジン本体が見えないのだ。一番の重量物であるエンジンブロックを落とし込み、その上の空間に補機類を配置することで、重心を低下させていることが視覚的に実感できるレイアウトである。ちなみにその昔、レオーネのエンジンの上にはスペアタイヤ(!)があった。この水平対向エンジンのスペースユーティリティーは侮りがたいものがある。

さて下調べもそこそこに、くだんの水平対向エンジンに火を入れ、試乗ルートにコースイン。海沿いの一般国道を走らせてみてまず感じたのは、エンジンの静かさである。数年前、二代目のレガシィの廉価版を仕事に常用していたのだが、その時のエンジンに比べてかなりスムーズになっていることがわかった。水平対向の特徴とも言うべき独特のビート感がかなり薄められており、これは一般的には洗練された、ということなのであろう。個人的には、あの常に鼓動しているようなフィールも捨てがたいのだが。国産で最高レベルに達する馬力を発生するエンジンも、それを予感させる荒々しさとはいっさい無縁な立ち振る舞いで、こちらが要求するだけの馬力を正確に供給してくれる。 走行距離1000kmあまりのまったくの新車だったのであまり高回転域までは試さなかったが、常用に使う限りではまったくのストレスもドラマもなく、粛々と4輪にトルクを与え続ける。ターボというよりは非常にできの良いスーパーチャージャー、あるいは大排気量の自然吸気エンジンのようにリニアな特性を感じさせるエンジンである。かといって、当然のことながら動力性能に不足があるわけではもちろんなく、ひとたび鞭をくれると軽やかなエクゾーストノートと共に四輪でアスファルトを蹴り上げ、いたって静かで平和な車内を瞬間移動させてくれる。資料によると、最大トルク32.5kgmを5000回転で発するという、最近の傾向からすれば高回転型に属するこのエンジンだが、ほとんどアイドリングに近い低回転から必要にして充分なトルクを発揮するので、高性能エンジンを扱っているという気難しさとはまったく無縁な一台である。
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MOMO製のステアリングの感触を楽しみながら、旧道にノーズを向ける。民家の間を曲がりくねった細い道が続くこのステージでも、このクルマは洗練された身のこなしを見せてくれた。ビルシュタイン製ダンパーが奢られたサスペンションは、その名前がイメージさせるよりずっとしなやかに路面を捉え、荒れたアスファルトの急カーブもほとんど突き上げ感を感じさせずにクリアしていく。この足回りのセッティングは絶妙と言えるもので、ワゴンという積載量によって重量が変わりやすいクルマのセッティングとしてはベストに近いものだと言える。また4WDであるにも関わらず回頭性も良好で、これは水平対向エンジンの重心の低さも作用しているのかもしれない。 地味ながらありがたい美点としては、運転席からの視界の良さがあげられる。現代のクルマとしては若干細く、しかも角度の立ったAピラーと、上下方向に大きく面積を取ったフロントスクリーンのおかげで、ブラインドコーナーにも安心して進入して行ける。この立ち気味なAピラーは居住性を向上させることにも効果的で、心理的な圧迫感を感じさせない。こういった細かな工夫は、刻々と変わる気象条件の中で長距離を移動する、などというシチュエーションで、ドライバーやパッセンジャーに与える疲労感の低減により役立つであろう。
モデルチェンジを経るごとによりソフィスティケートされていく水平対向エンジン、電子デバイスによって緻密に駆動力を制御された4WDシステム、そしてクルマの基礎とも言うべき居住性の良さ、それぞれを非常に高い次元で併せ持つクルマは、世界中を見渡しても数える程しか存在しない。しかもそれらは、軒並み目玉の飛び出るようなプライスタグをも標準装備しているのだ。レガシィというクルマは、そういった世界レベルの性能を、多くの人に味わえるようなセッティングとプライスで提供してくれている。 デザイン自体は好みが分かれるところだろうが、このクルマのオーナーであるM氏のように、スタイルに惚れ込んで手に入れた方は、長く乗るにつれてその恐るべき潜在能力に舌を巻くこととなろう。以前はさほどクルマに興味がありそうに見えなかったM氏の口から、富士重工のエンブレムである「六連星(むつらぼし)」と言う言葉が発せられたのを聞いた時、このクルマが持ち主を惹きつける力の奥深さを垣間見た気がした。




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